海外企業とのプロジェクトの進め方は、日本国内のプロジェクトとは大きく異なります。言語だけでなく、文化、プロジェクト管理手法、ビジネススキルにも違いがあるからです。
私自身、エンジニアとして欧米企業との新規開発プロジェクトにてその進め方について体感してきました。ただそれと同時にその違いについて知る機会の無さについて痛感しました。実際にそのプロジェクトに参加しない限り、その違いを知ることができません。
そのためこの記事では、まだ海外企業との開発プロジェクトに携わっていない方、もしくは携わっている期間が短い方向けに、私の経験を踏まえて海外企業とのプロジェクトの進め方について解説します。
またプロジェクトを進めるにあたって必要になる英単語と英語表現もそれぞれ25個ずつ紹介します。海外企業の開発プロジェクトの進め方に興味がある方はぜひご確認してください。
目次
プロジェクト管理手法の違い
最初に理解すべきは、日本と海外でのプロジェクト管理手法の違いです。
プロジェクト管理手法には数多くの種類がありますが、主に「ウォーターフォール型」と「アジャイル型」がよく知られています。それぞれの特徴も簡単に記載します。
プロジェクト管理手法 | 特徴 |
---|---|
ウォーターフォール型(Waterfall) | プロジェクトを一連の段階に分割し、各段階を順序立てて進行。日本企業に好まれる。 |
アジャイル型 (Agile) | 柔軟性と反復性を重視し、新たな要求にも迅速に対応可能。 スクラム型など具体的なフレームワークが含まれる。 欧米企業に好まれる。 |
スクラム型 (Scrum) | アジャイル型の一種。 高速・反復的な開発に適しており、 小チームでの作業を推奨。 |
リーン型 (Lean) | 無駄の排除と効率化、品質改善に焦点。 トヨタ生産方式から派生。 |
このように、各手法はそれぞれ特徴があり、また一部の手法は他の手法のフレームワークとして位置付けられています。
プロジェクト管理手法の選択は、その企業の文化や業種、プロジェクトの規模や性質、チームの構成など、さまざまな要素によって影響を受けます。しかし、一般的には次のような傾向が見られます。
日本企業はウォーターフォール型が好まれる
日本企業では伝統的に「ウォーターフォール型」のプロジェクト管理手法が好まれる傾向にあります。これは、明確な計画と段階的な進行が日本の企業文化や価値観と相性が良いためです。ウォーターフォール型では、基本的に前の工程に後戻りしないことを前提にした管理手法であり、詳細な計画作成とその順守を重視します。
確かにこの流れは私たち日本人エンジニアには親しみがありますね。
欧米企業は「アジャイル型」や「スクラム型」がよく採用される
一方、欧米企業では、 「アジャイル型」がよく採用されます。アジャイル式に分類される「スクラム型」も書籍やセミナーなどでよく耳にするようになりました。
アジャイル型は、短期間でプロジェクトを進行し、途中での変更も柔軟に対応する手法です。これらの手法は、変化に対する迅速な対応や柔軟性、チーム全体のコミュニケーションを重視するという、欧米の企業文化に合致しています。
海外の企業、特にアメリカの企業ではアジャイル型が一般的です。これは変化の速い市場環境に対応するため、またユーザーの声を素早く取り入れて製品改善を行うための手法として重宝されています。
我々エンジニアも、文化の違いからくるこれらの手法の違いを理解し、適切に対応することが求められます。
もちろん企業にもよりますが、私の経験からも、欧米の大企業において、大きなプロジェクトほどいくつもの小さな開発フェーズを回しながら最終的な形に仕上げる形がスタンダードです。
自身の経験と知識の活用
あなた自身が持つ専門知識や経験は、海外でのプロジェクト進行において重要な役割を果たします。特に、技術的な課題に直面した際や新しいアイデアを提案する必要があるとき、自分の専門知識や経験が大きな助けとなります。
例えば、エンジニアであれば、設計の知識を活用して、プロジェクトの初期段階で潜在的な問題を見つけることができるでしょう。それは、製品開発の遅延やコストオーバーランを防ぐために極めて有益です。プロジェクトのメンバーであれば、役職に関係なく積極的に自分の意見を伝えましょう。
海外の企業では打合せの場所にいて意見を出さない人の評価はと極端に低いです。疑問点、懸念点、意見などなんでも構いません。
しかし、その知識を適切に活用するためには、英語で自己表現できる能力が必要となります。つまり、自分のアイデアや意見を他のチームメンバーやパートナーに理解してもらうためには、技術的な知識だけでなく、英語でのコミュニケーションスキルも必要となります。
このため、自身の専門知識を深めると同時に、英語によるコミュニケーションスキルの向上も意識して取り組むべきです。その一助となる英語学習方法については後述します。
このように、自身の経験と知識を活用し、それを適切に伝えることで、海外プロジェクトにおいて有意義な貢献をすることが可能となります。
プロジェクトを進めるために必要な英単語・英語表現
海外のお客様とプロジェクトを進める上で、プロジェクト方式が理解できたら、次に重要なのが、よく使われる英単語、英語表現の理解です。
これには、「ビジネス英語の理解」「プレゼンテーションスキル」「ネゴシエーションスキル」が含まれます。これらのスキルは、海外のパートナーやクライアントと円滑にコミュニケーションを取るために必要不可欠です。
ここではプロジェクトの進行に必要な英単語と英語表現をそれぞれ20個紹介します。
プロジェクト進行に必要な英単語20個
こちらプロジェクトを進行するうえでよく使われる英単語です。これらの単語は最低限意味が分かるようにしておきましょう。
英単語 | 発音 | 意味 |
---|---|---|
1. Project | プロジェクト | 計画、企画 |
2. Schedule | スケジュール | スケジュール、 予定表 |
3. Scope | スコープ | 範囲、領域 |
4. Task | タスク | 作業、任務 |
5. Deadline | デッドライン | 締め切り |
6. Milestone | マイルストーン | マイルストーン、 重要な節目 |
7. Risk | リスク | リスク、危険性 |
8. Mitigate | ミティゲート | 軽減する、和らげる |
9. Resource | リソース | 資源、リソース |
10. Requirement | リクワイアメント | 要求、必要条件 |
11. Stakeholder | ステイクホルダー | 利害関係者 |
12. Status | ステータス | 状況、状態 |
13. Deliverable | デリバラブル | 成果物、提供物 |
14. Collaboration | コラボレーション | 協働、共同作業 |
15. Objective | オブジェクティブ | 目標、目的 |
16. Prioritize | プライオライズ | 優先する、 重要度をつける |
17. Retrospective | レトロスペクティブ | 振り返り |
18. Backlog | バックログ | バックログ (未解決のタスクリスト) |
19. Estimate | エスティメイト | 見積もりをする、 予想する |
20. Workflow | ワークフロー | ワークフロー、 仕事の流れ |
プロジェクト進行に必要な英語表現20個
こちらはプロジェクト進行でよく使う英語表現です。ぜひ一通り目を通しておいてください。
1.What’s the status of the project?
プロジェクトの状況はどうですか?
同じ意味を持つ他の英語表現はいくつかあります。
- “How is the project progressing?” (プロジェクトの進行状況はどうですか?)
- “Can you give me an update on the project?” (プロジェクトの最新の状況を教えてもらえますか?)
- “Where are we on the project?” (プロジェクトはどの段階まで進んでいますか?)
これらのフレーズはどれもプロジェクトの進行状況や最新の状態を尋ねるためのものですので、状況に応じて適切なものを選んで使用すると良いでしょう。
2.Let’s discuss the project scope.
プロジェクトの範囲について話し合いましょう。
3.We need to prioritize these tasks.
これらのタスクを優先順位付けする必要があります。
“Prioritize”[プライオラタイズ]とは、「優先順位をつける」という意味を持つ英単語です。”Prioritize” の名詞形は “Priority”(プライオリティ)となります。「優先順位」や「重要度」を意味します。聞いたことあると思います。
4.The deadline has been moved up.
締め切りが前倒しになりました。
締め切りが後ろ倒しになる場合は英語で “The deadline has been pushed back.” と表現します。”pushed back” が「後ろに押し出す」つまり「後ろ倒しにする」という意味になります。
5.We should mitigate the risks.
リスクを軽減すべきです。
“Mitigate”(ミティゲイト)は、「軽減する」や「和らげる」という意味の英単語です。主に問題やリスク、損害など、何らかの負の状況や影響を減らすために使われます。ヨーロッパのお客様の会議でもよく耳にします。
6.What are the project deliverables?
プロジェクトの成果物は何ですか?
7.Who are the stakeholders in this project?
このプロジェクトの利害関係者は誰ですか?
8.Let’s update the project schedule.
プロジェクトのスケジュールを更新しましょう。
9.We should allocate resources effectively.
効果的にリソースを割り当てるべきです。
“Allocate”とは、「割り当てる」または「配分する」という意味を持つ英単語です。主にリソース、時間、資金などを特定の目的や人々に配分する際に使用されます。
10.What are the project requirements?
プロジェクトの要求事項は何ですか?
11.We’re using Agile methodology for this project.
このプロジェクトではアジャイル方式を使用しています。
Methodologyとは「方法論」や「研究手法」を指し、一連の理論や原則に基づいた手法やアプローチ全体を指します。一方、Methodは「方法」や「手段」と訳され、特定のタスクを達成するための具体的な手段や手順を意味します。
12.We should adjust the timeline due to the changes.
変更により、タイムラインを調整すべきです。
13.Let’s have a retrospective meeting.
振り返りのミーティングをしましょう。
“Retrospective”[レトロスペクティブ]は、「振り返り」や「回顧」という意味の英単語で、特にプロジェクトや活動が一段落ついた後に、その過程や結果を振り返り、反省や学びを得るための会議やセッションを指す言葉としてよく使われます。
14.Please update the backlog.
バックログを更新してください。
Backlog[バックログ]は、「未解決の仕事」や「積み残しのタスク」という意味の英単語です。
15.Let’s update the Kanban board.
カンバンボードを更新しましょう。
16.We need to improve our workflow.
ワークフローを改善する必要があります。
ワークフローを改善するとは、この一連の手順をより効率的かつ効果的にすることを目指します。これは、無駄なステップの削除、新たな手段の導入、または既存の手順の最適化を通じて行われます
17.The project is on track.
プロジェクトは予定通り進んでいます。
同じ意味を持つ他の英語表現もあります。いくつか例を挙げます。
- “The project is proceeding as planned.”
- “The project is going according to schedule.”
- “We are on course with the project.”
18.There are some bottlenecks in the project.
プロジェクトにいくつかのボトルネックがあります。
“Bottleneck”[ボトルネック]は、「進行の障害」という意味の英単語で、プロジェクトや業務の流れが停滞する原因となる部分を指します。これは、特定の工程やプロセスが他よりも遅く、全体の効率や進行速度を阻害してしまう状況を表現する際に使われます。
19.We need to adjust the project plan.
プロジェクト計画を調整する必要があります。
20.Let’s review the project milestones.
プロジェクトのマイルストーンを見直しましょう。
「マイルストーン」はプロジェクト進行の重要な目標や節目を指す言葉です。これを達成することでプロジェクトが順調に進行しているかを測る指標となります。
この章ではプロジェクト管理の英単語、英語表現を紹介しました。
これらの表現は基本的なものですが、これらを理解し使いこなすことで、グローバルな環境でのプロジェクトコミュニケーションが十分スムーズに行えます。
これらを活用して、プロジェクトの進行状況の把握、リソースの管理、リスクの軽減、そして全体の効率向上につなげていきましょう。
英語でプロジェクトリードするためにおすすめの学習方法
海外プロジェクト進行に臨むための3つの学習方法を提案します。いずれも英語に触れる機会を増やし、ビジネスで使える英語を学ぶことができるものです。
オンライン英会話
DMM英会話やBizmatesなどのオンライン英会話を利用すると、自宅からでも英語のスキルを向上させることができます。これらはリアルタイムでネイティブスピーカーと会話でき、日常的な英語表現だけでなく、ビジネス英語も学べます。
オンライン英会話スクールはコストパフォーマンスも高く、例えば、DMM英会話では月々7,000円台で毎日レッスンを受けることができます。
また、教材も豊富に用意されており、その中にはビジネスで使用する教材も多く準備されています。例えば下記のような教材が準備されており、英単語を学んだうえで、本文に移っていきます。
例えば、ここに出てくるボキャブラリーに「in touch(連絡をする)」という表現があります。自分だけの学習ではなかなか身につけることができません。
オンライン英会話を試したことがない方は、一度無料体験レッスンを受けて、自分にあったものか確認してみましょう。
英語学習アプリ
スタディサプリなどの英語学習アプリは、自分のペースで学べる点がメリットです。リスニングやリーディング、文法など、自身が弱いと感じる部分を重点的に学ぶことができます。
オンライン英会話を始めるハードルが高いと感じる人、また隙間時間を有効に使いたい人にはお勧めです。
スタディアプリではストーリ立ての興味深いレッスンだけでなく、Youtubeでの1回2分の密度の濃い授業も受講することができます。
海外のビジネスニュースや論文の読解
英語のビジネスニュースや論文を読むことで、ビジネス英語の理解を深めることができます。また、最新の業界トレンドや技術動向も把握することができます。
それぞれの学習法が有効な理由としては、実践的な英語力の習得、自分の学習ペースの調整、業界知識の習得となります。それぞれの方法が補完し合い、英語力と専門知識の両方を高めることができます。
海外のニュースについては、オンライン英会話でも毎日最新のニュースが更新されるため、自分で情報を取りに行かなくても海外の情勢を知ることができます。
最後に、あなたのキャリアアップのために今日から始めよう!
この記事では、海外のプロジェクト進行の管理手法の違い、そしてプロジェクトを進行していく中で使われる英語表現について紹介しました。
海外のプロジェクトに参加するためには、プロジェクト管理手法の理解、英語でのビジネススキルの習得、自身の経験と知識の活用が必要となります。それらを支える学習方法として、オンライン英会話、英語学習アプリ、海外のビジネスニュースや論文の読解が有効です。まだ初めていない方はぜひ今日から始めましょう。
海外プロジェクトは難易度が高いかもしれませんが、適切な準備と学習を通じて、その挑戦を成功に導くことができます。あなたのキャリアアップの一歩となることを願っています。